コロナ対策と経済のよくある誤解

よくネットでは、専門家会議が緊急事態宣言を出して日本経済をボロボロにした、などと言う人がいまだに多いですが、本当だろうか。

 

第205回日本経済予測(改訂版) 2020年06月08日 | 大和総研グループ | 熊谷 亮丸 | 神田 慶司 | 佐藤 光 | 溝端 幹雄 | 橋本 政彦 | 山口 茜 | 鈴木 雄大郎 | 小林 若葉 | 田村 統久 | 和田 恵 | 岸川 和馬 | 矢澤 朋子

https://www.dir.co.jp/report/research/economics/outlook/20200608_021589.pdf

このレポートを見ると、短期シナリオでのGDP乖離幅予測のうち、個人消費の抑制が占める割合は8兆円程度、GDP比で言えば1-2%くらい。それよりも大きいのは世界経済の減速による悪影響。

 

実績ベースで、緊急事態宣言が経済に与えた「固有の」影響はどの程度だろうか。

新型コロナによる活動自粛で個人消費はどの程度抑制されたのか 2020年06月29日 | 大和総研グループ | 山口 茜 | 神田 慶司

4月単月で-3兆円。GDP比で1%にも満たない。

 

つまり緊急事態宣言が出ようが出まいが、海外が全力で防衛体制をとって国民の警戒感も強い状態では、日本経済は勝手に自動的に痛むのであって、自粛要請による売り上げ減は全体からみたら大したダメージではない。世界が同時に委縮する悪影響の方が大きいことを統計データが示している。自粛による消費抑制*だけ*で日本経済がボロボロになってなどいません。

 

 今回の感染症対策の最適解候補はここにあります。

「疫学」と「マクロ経済学」の視点から ―最新論文に見る感染症対策と経済活動維持の最適解とは― | 研究活動 | 東京財団政策研究所

「この論文のシミュレーション結果では、全ての人に検査をする、あるいは完全に市中をロックダウンすることが不可能な場合には、180日間のロックダウンを行い、その後検査と隔離に切り替えることで死者数を0.007%に抑えつつGDPの減少幅を2.3%に留めることができると結論付けられています。」

 

ついでに言えば、商売は凹む業界があれば、それを補って伸びる業界もある。日本の株価が大きく下落してない理由はこれ。

RIETI - 新型コロナウイルス感染症による危機が日本の産業に与えた影響:株式市場からのエビデンス

 

やれ失業者が激増するとか、自殺者が激増するとか、倒産ラッシュが起こるとか、ハイパーインフレになるとか、あることないこと吹聴してこれら全部を緊急事態宣言のせいにする輩は、新型コロナの脅威を必要以上に煽る連中と同じように悪質。